病棟という限られた空間で治療を受け続ける入院生活は、患者にとって心細い毎日と感じられて当然だろう。看護師が誠心誠意で尽くしていても、忙しそうな姿を目にすれば、感謝の気持ちに反して機械的に扱われているような思い込みが交錯しても不思議ではない。ましてや、多くの看護師の言葉遣いは標準語のイントネーションを意識する比率が高く、その点も都心部外の患者にとってどこか冷たく感じられる一因となる。
こうした現場の空気を自然に和らげ、患者との距離感を縮める効果が期待されるのが適材適所の方言だ。患者は、地元特有のちょっとした言い回しに親近感を覚えるのである。その方言をキッカケに、患者がスムーズな治療に協力してくれる可能性も高まってくるだろう。
丁寧な言葉遣いだったとしても距離感のある標準語とは異なり、家族や友人のような肩肘張らない柔らかな印象も方言ならではの魅力といえる。スキルアップや待遇面を見れば、都心部の医療機関の方が安定しているのは事実だろう。しかし、方言に魅せられて、地方の医療機関で働くことを決意する看護師も少なくないのだ。
人と人との心地いい距離感、そして医療機関全体が家族のように感じられる親近感など、方言については多くの魅力が語られている。こうした医療環境であれば、看護師も患者も無用に心にバリアを張ったりしない、素直なコミュニケーションが図れるかもしれない。これが結果として、より高品質な治療の提供につながれば、そのメリットは計り知れないものだろう。方言の実情については【方言でほっこり】でも語られているので、参考に読んでみるといい。